「倍音 音・ことば・身体の文化誌」を読みました

クリスタルボウルは「倍音」の楽器といわれます。では、倍音とは何でしょうか?なぜ我々は倍音に魅了され、倍音に癒されるのでしょう?

この本ではいくつもの例を挙げて、倍音の魅力に迫っていきます。まず、人類が発生したのは熱帯雨林のジャングルであり、熱帯雨林は非可聴領域の音と倍音に溢れていると説かれます。そのため、人類は非可聴領域の音と倍音に触れることで感覚が鋭敏になっていく、と。私たちの生活環境・音環境は数年単位・数十年単位で猛烈に変化しています。

アナログレコードからCDへ、そしてMP3へ、ハイレゾ音源へ。木造建築から鉄筋コンクリートへ、虫の声から自動車の走行音へ。

しかし、人間の脳みそのサイズは1万年前から変わっていませんし、「どの時代が長かったのか」を考えると、近代はあまりに短いです。

安全な環境においてゆったりとした倍音に包まれることで、我々の体はしっかり休むように設計されているのかもしれません。

さらにこの本では、母音を多用し、同じ音の使い回しが多い日本語環境における倍音の重要性、その日本語環境において発達してきた日本人の倍音に対する感度にも言及しています。

クリスタルボウルはアメリカ、オーストラリア、日本で人気です。アメリカやオーストラリアといった歴史の浅い国においては「ニューエイジ」というカテゴリで、ヨガやUFOや東洋の神秘を尊重する風潮がありますが、日本でなぜクリスタルボウルが人気なのか?を考えたとき、日本人の倍音に対する感度の高さも一役買っているのかもしれません。

残念ながら、この本においても倍音の研究データはごくわずかな掲載に止まっていました。より深い研究が行われるように、まずは私たちが、クリスタルボウルの倍音の楽しさに触れてみましょう。

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